レディースネットワーク・21 H18調査研究報告
 『木質ペレットストーブ普及を生かした山村地域活性化調査報告書』
 第1部 調査研究報告


3 岩手県調査

ペレットストーブ普及先進地の1つ岩手県での調査報告です


(1) 調査地概要

 岩手県葛巻町は岩手県北部に位置しています。人口は約8千人で畜産業が盛んな地域です。森林の面積は、3万6千haと町の面積の8割以上を占めています。また、薪炭材の生産地であることから、森林面積の5割を天然林が占めています。
 平成11年に風力発電システムを導入した頃より、クリーンなエネルギーを使った町おこしをキャッチフレーズに、その一環として木質ペレットストーブの普及も進められました。
 葛巻町におけるペレットストーブ普及の取り組みとしては,県や町の普及促進事業をはじめ県内4つのペレット製造会社と2つのペレットストーブ会社で行われています。中でも、昭和57年よりペレットの製造をする葛巻林業株式会社は普及事業において、町や県での重要な役割を果たしています。


(2) 調査地普及概要

 県や市町村が積極的に普及促進事業を取り入れ、役場や学校といった公共施設にも積極的に導入されています。
 普及啓発活動として、自然エネルギーに関連するシンポジウムの開催を行い日本各地にさらには世界へ向けてクリーンエネルギーの大切さを発信しています。ペレットストーブの普及台数の推移は表のとおりです。

  平成14年度 平成15年度 平成16年度 平成17年度
台数 27 199 542 814

 町や県の普及活動と県内のストーブ製造会社・ペレット製造工場の努力によってここまで普及がされてきました。近年、県内の小学校や高等学校等にもペレットストー ブが設置されるところもあり、子供達にとっても身近な存在となっています。
 葛巻町では、町内にペレット製造工場である葛巻林業があるため、各家庭は1kg25円で直接購入できます。
 どの家庭1回に500kg入りを購入しており、サイロ(飼料を貯蔵するタンク)で保存するという酪農郷らしい特徴も見られました。

(3) 調査結果

 葛巻町内に住む皆さんへ聞き取り調査を行いました。

【1件目 Sさん・食堂内】
 使っていたヒーターが壊れた際に、購入されました。葛巻町職員に勧められて購入し、来ず牧町独自のペレットストーブ購入促進事業を用い購入されています。ストーブは家の一部で経営する食堂に設置しており、朝8時〜夜2時と使用時間は長く、購入して良かった点としては、客からの評判も良い上、従来使っていた暖房器具の燃料費に比べ1シーズン2万円程度安くすんだそうです。

 Sさん宅

【2件目 Uさん・自宅の居間】
 Sさんから勧められて購入されました。2世帯で暮らすことをきかっけに購入しています。ペレットストーブの特徴の1つに、1度温まると冷めにくいというものがありますが、朝起きたときでも前日の温かさが残り、同居する祖父母の体にやさしい点を長所としてあげておりました。

 ペレット貯蔵タンク(サイロ)

【3件目 Aさん・自宅の居間】
 家を買いそうした際に購入されました。従来の簡易ストーブだと、家の各部屋に合計5台装備していたところ、石村工業性のストーブだと、1台で家中が温まるとのことです。ペレットストーブの暖房機能を最大限生かす方法として、間仕切の少ない、高気密性住宅にする方法があります。このような住宅だと、Aさんが言うとおり、ペレットストーブ1台で家中を温めることができます。

【4件目 Nさん・自宅の居間】
 家を建て替える際に購入されました。以後、新築を予定している知り合いから、設計段階で、ペレットストーブ設置を考えていると相談を受けるとの事でした。ペレットストーブの暖房機能を生かすためには、家の構造と暖房のバランスが重要になるため、実際、岩手県内では住宅業者が設計段階でペレットストーブの導入を進めることもあるようです。

【5件目 Hさん・自宅の廊下】
 「町に木質バイオマスを普及させるのであれば,まずは自分が実践してみよう!」と購入されました。サンポットをはじめとするペレットストーブ会社の多くは消費者とメンテナンス契約を結んでいるようで、シーズン前・シーズン中のメンテナンスを欠かさない点を長所として挙げておりました。

【6件目 役場】
 役場では、入り口と庁舎内の図書室に合計2台設置されています。入り口付近のストーブは、各種手続き等に役場を訪れた町民が直接目にとまる場所に設置され、設置 当所は、町民からの問い合わせが多かったとのことです。
 庁舎内の図書室は保育所のような機能をもっており,平日は夜8時まで点火していることから、図書室で仕事帰りの両親を待つ子供達を中心に利用されています。図書室の年間利用者数は約1,000人で、管理者の話によると、温度調整や煙発生による機械の不具合を子供達が積極的に監視し管理しているとの事でした。このように子供達の接する所に設置することで、葛巻町内の子供達は葛巻林業でペレットを生産していることを大変誇りに思っているそうです。

 庁舎内図書館

【7件目 ワイン工場】
 葛巻町は「クリーンエネルギー導入」に関しては日本国内で先進地であり、観光客・視察者を含め年間50万人が訪問します。そうした点を生かし、町の特産物である山ぶどうを生かし「ワイン工場」があります。ワイン工場への年間訪問客は8万人、ペレットストーブはロビーに設置されており、訪問者からも問い合わせがあるとの事です。その他、ソバ打ち等の校外学習の場として町内や近隣の小学生も利用しています。

 ワイン工場


 上記の聞き取り調査の他、岩手県立葛巻高等学校にて、ペレットストーブに対する高校生の意識についてまとめました。

◆ アンケート実施場所:岩手県立葛巻高校
◆ 実施期間:平成18年8月
◆ 方法:高校2年生および吹奏楽部生へのアンケート
◆ 回答者数:45名
◆ 結果の概要:ペレットストーブを知っている(35名)、ストーブを家でも使いたい(15名)、環境に良いからストーブを家でも使いたい(12名)、ストーブの気になる点(サイズが大きい7名)、どんなストーブがあったらよいか(サイズが小さいストーブ)

 このアンケート調査から分かったことは、ペレットストーブを知っている人はまだ少ないということと、ストーブの印象は良く、自宅に置きたいと考える人はいるが、価格が高い、サイズが大きい、デザインが良くないなどの理由でなかなか購入とまではいかない人が多いのではないかということです。
 葛巻町では町自体が「クリーンなエネルギーを使った町」をキャッチフレーズにしておりますので、小中高校生への総合学習時間を用いた環境教育も行き届いています。ペレットストーブの認知度の高さ、環境問題への意識の高さからみても、こうした学校教育の成果が現れていると思われます。

 総合学習の様子


(4) 考察

 葛巻町を含む岩手県でのペレットストーブ普及の歴史的背景としては「1970年代のオイルショックによる石油代替エネルギーとしての期待」「2000年に入ってからの環境意識の高まり」等がきっかけとしてあります。また、薪炭材生産量全国第1位というデーターもある上、薪のような木をエネルギーとして使う習慣が山村等の一部で今でも残っています。実際,薪ストーブを懐かしんで購入されたりする方もいるようです。
 @1982年より葛巻林業にてペレットの製造が始められA2003年には岩手県とサンポット株式会社により「岩手型ペレットストーブ」が共同開発されB町や県の普及促進事業として積極的なPR活動・設置への補助金制度が導入される、というような普及展開が進められています。現在、県内には2つのストーブ製造工場と4つのペレット製造工場があり、技術力の高さも見ることができます。
 岩手県でのストーブ普及台数は、県とサンポットによるストーブ開発と県と町による普及促進事業・公共施設への設置が始まった2003年より莫大的に増えました。普及の柱の1つに「公共施設導入による一般家庭への購入きっかけづくり」がありますが、814台中550台は一般家庭になりますので、成果は上げられていると言えます。「環境」をキーワードに購入された方「燃料費重視」で購入された方」いろいろと思いますが、さらに普及の和を広めていくためには、高校生の声にもあったように「小型化」を踏まえ消費者の声を取り入れた普及がなされることでしょう。
 岩手県での「ペレットストーブ普及事業」は、町民・県民の1人一企業の声を聞きながら「元気な岩手県」のために企業や町・県が手をとりあって普及を展開させて例なのではないかと思います。
 今後も、さらなる普及へ産・官・学・民の連携が求められています。

 風車の回る町



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