レディースネットワーク・21 H18調査研究報告
 『木質ペレットストーブ普及を生かした山村地域活性化調査報告書』
 第2部 フォーラムの開催


2 基調講演


 ○講師紹介

 明治大学農学部早田保義一教授より「森のバイオマスが創る未来」と題して貴重後援をして頂きました。
 早田教授は、NPO法人森のバイオマス研究会を主催し、安全で環境に負荷のかからない暮らしのあり方を追求するため、資源循環型の地域づくりと啓発・啓蒙活動を行っています。また、広島県庄原市にある森林・里山再生とバイオマスを用いた資源循環型の地域づくりに関するSARUプロジェクト会議では顧問を務めています。


 ○基調講演の内容

 森のバイオマスが創る未来
 − 使い捨てから資源循環型社会へ −

 森のバイオマス
 使い捨てから資源循環型社会への取り組みのひとつにバイオマスの利用があります。特に森のバイオマスについて取り上げる理由は5つあります。@地球温暖化は想像以上に深刻で、我々の子供や孫の世代には目に見える形で現れるでしょう。A森林や里山は、整備が行き届いていないため大雨が降るとすぐに崩壊しています。B化石燃料はあと40年ぐらいしかもたないと言われていますが、バイオマスはカーボンニュートラルな再生するエネルギーです。C日本中どこにでもある森林や里山は人が入ることで地域が活性化し、雇用や新しいビジネスを創出します。風力では雇用の期待はできません。また、日本は温暖で湿度が高く、雨が多いといった世界でも珍しい植物にとって理想的な気候です。そのため植生が豊かで質の高い木材がとれます。北欧は乾燥した気候のため一度草を刈れば生えてきません。日本のように何度も下刈りをしなくて良いので雇用が生まれないのです。このように恵まれた気候を利用できていない、良質な国産材を利用していないのが現状です。Dこれからは物質的な豊かさから、心の豊かさが求められています。
 地球上で太陽のエネルギーを最も効率よく固定するのは光合成であり、木材は無くならない再生するエネルギーです。石油から作られている燃料、化学品、素材などはすべてバイオマスでも作ることができます。技術的にも実用レベルですが、石油でつくる方が安価なためまだ一般的でありません。


 バイオマスエネルギー循環型の地域づくり
 庄原地区の活性化策として外国の若者対象の「里山ワークキャンプ」を実施しました。2週間のボランティアでしたが多数の応募があり驚きました。ヨーロッパでは1980年代から資源循環型社会への関心が高まり、イギリスのBBC放送が里山の特集を放送するなど日本の先人たちの暮らしに注目が集まっていたようです。しかし、この取り組みは根本的な解決になりませんでした。経済効果を上げるには付加価値が必要だったのです。そこで、温暖化対策や経済効果など利点がたくさんあるバイオマスに取り組もうと平成14年6月13日にNPO法人「森のバイオマス研究会」(旧:庄原森のバイオマス研究会)を設立しました。私が中心となって設立したように聞こえますが、設立の中心人物は県職員の方です。
 彼は熱く構想を語ってくれました。行政の皆さんにお伝えしたいのは、キーパーソンを見つけて積極的にアプローチすればお金がなくても風を起こすことができるということです。また、一般市民には情報を得にくい事、例えば助成金に関すること、森林のデータ、関係者の紹介なども期待しています。
 
 5年ほど前は「バイオマス」という言葉があまり知られていませんでした。目に見える形で知ってもらうため、家庭で使えるペレットストーブの普及から取り組みました。設置した三次市の地ビールレストランでは炎を見ながら飲むビールはおいしいとお客さんの評判は上々でした。また、それまで使っていた空調を3台止めることができてランニングコストが安くなったそうです。庄原市の川北小学校では児童から「炎が見えるのがいい」「いやなにおいがしない」という声がありました。それまで使っていたファンヒーターは排ガスが部屋に放出されるので2時間ごとに換気が必要であり、人体に有毒でした。学校や病院は健康の点からもぜひペレットストーブを導入して欲しいと思います。
 また、地元で製作したペレットストーブを地元で使いたいということで、開発企業とNPO、行政の3者で「ペレトーブ」を開発しました。マスコミは市民団体がやっているという話題性から大きく取り上げてくれました。話題になったことで開発企業の社員のモチベーションが向上し、NPOは信用度が増しました。この間、行政が全く表に出てこなかったことは成功の鍵でした。

 市内公共施設へのストーブ導入


 備北地域でのペレット生産
 庄原市における年間木質廃材産出量のうち、製材所等からの廃材、家屋解体廃材、新築現場からの廃材、工事現場等の根株・枝葉、街路樹・公園からの枝葉のほとんどは焼却処分されていますが、これを灯油のエネルギーに換算すると灯油缶23万本に相当します。林業の皆伐・間伐施業で出る林地残材は灯油缶40万本に相当します。また、庄原市の樹木の年間成長量は、広島県で1年間に住宅建築で必要な木材の半分が供給できます。そこから出てくる廃材や林地残材のバイオマスエネルギーは庄原市民4万3千人が1年間に使用する総エネルギーをまかなえるという結論が出ています。このような資源の循環は東京のような大都会では難しいですが、中山間地域では可能であり、人や地球に迷惑をかけていないという誇りを一人ひとりが持つことができます。
 研究会ではペレットを作るため小型のペレタイザーを導入しました。いろいろ試験した結果、ススキや竹、その他草本植物がペレットに加工できることが分かりました。これまでリグニンによってペレットが固まると言われてきましたがそうではないようです。野焼きが禁止され、処分に困る雑草が燃料に生まれ変わります。集落単位での資源循環の構想としては、地域住民による里山の手入れで出た雑木や雑草でペレットを製造し家庭の燃料とします。地域単位では大型ペレタイザーを導入して事業ベースでペレットを生産するペレットチェーンの構築が必要です。庄原はペレットチェーンを構築する段階に来ていると感じています。森林、加工、メンテナンス、販売、流通システム、需用などすべてが整って初めて回っていくものですが、ここから雇用やビジネスチャンスが生まれてきます。


 木炭バスの走る木の香りのする町づくり
 研究会は現在「木の香りのする町づくり」をテーマに活動しています。戦後10年くらいの間、木炭でバスが走っていた時期がありました。それを復活させてはどうかという案です。せっかくですのでレトロ調の車体で床も木で作ることを提案しています。バイオマスを観光資源としてとらえることは大切です。バイオマス利活用の先進地である岩手県の葛巻町の観光客は、平成9年に9万人であったのが視察に訪れる人が増加し平成13年には46万人になったそうです。


 木質バイオマスの普及啓発活動
 研究会は一般の方に森林に関心を持ってもらうことが大事と考えています。森林整備のイベントや子供向けの環境教育の実施、木を使ったクラフトなど商品開発にも力を入れています。

 森林整備の体験学習

 スターリングエンジンというのをご存知でしょうか。外燃機関であり、ピストンの外から熱を入れると稼動するしくみでバイオマスの利用が可能です。イギリスでは実用タイプのものがあり家庭で使用するのに十分な電気を発電することができます。「オール電化ハウス」というのがありますが、スターリングエンジンを用いて「オールバイオマスハウス」はいかがでしょう。コンセプトはあるので建築家にぜひ設計していただきたいと考えています。電力会社が発電所で発電した電気は、送電線を通って家庭に届くまでに70%がなくなり利用できるのはたった30%です。オールバイオマスハウスの場合、発電量100%のうち途中でなくなってしまう電気は10%で90%が利用可能です。
 また、最近はバイオエタノールが注目されています。農業はこれまで食料産業が中心でしたが、これからはエネルギー産業での活躍が期待されます。


 NPOが果たす役割と課題
 NPOとは非政府、非営利でかつ独立した意志決定機関を有している公益活動に従事する任意の組織のことです。ピーター・F・ドラッカーによると、NPOの役割のひとつは人々の生活や社会の質の向上を目指すこと、もうひとつはNPOに参加し支援する人々が社会やコミュニティーの構成員であることの意識を醸造し、心の充実感を得られることと定義しています。課題は下請け化するNPOと進化するNPOの二極化が進むことが危惧されることです。その分かれ道は財政的なものと考えられます。施策として、今後はNPOの財源について考えていただきたいと思います。

 シンポジウム等の開催

          レストランや家庭へのストーブ導入



 報告書目次に戻る